幸せと悲しみ②

前回のブログの続き・・・

 

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悲しみはみんなに

「デンデンムシノカナシミ」は、

昭和十年に執筆された新美南吉の童話です。

 

「一匹の、デンデン虫がいました。

ある日、そのデンデン虫は、大変なことに気が付きました。

『私は今までうっかりしていたけれど、

私の背中の殻の中には、悲しみが、いっぱい、

つまっているではないか』

 

この悲しみは、どうしたらよいでしょう。

デンデン虫は、お友達のデンデン虫のところに行きました。

 

『私はもう生きていられません』と、

そのデンデン虫は、お友達に言いました。

 

『何でですか』と、

お友達のデンデン虫は聞きました。

 

『私は、何と言う不幸せな者でしょう。

私の背中の中の殻の中には、悲しみがいっぱい、

つまっているのです』と、

はじめのデンデン虫が、話しました。

 

すると、お友達のデンデン虫は言いました。

『あなたばかりではありません。

私の背中にも、悲しみはいっぱいです』

それじゃ仕方ないと、はじめのデンデン虫は、

別のお友達のところへ行きました。

 

すると、そのお友達も言いました。

『あなたばかりじゃありません。

私の背中にも悲しみはいっぱいです』

 

そこで、はじめのデンデン虫は、

また別のお友達のところへ行きました。

 

こうして、お友達を順々に訪ねて行きましたが、

どの友達も同じことを言いました。

 

とうとう、はじめのデンデン虫は、気がつきました。

『悲しみは誰でも持っているのだ。

私ばかりではないのだ。私は私の悲しみを

こらえていかなきゃならない』

 

そして、このデンデン虫はもう、

なげくのをやめたのです。

 

人間は、見た目には明るく振る舞っていても、

その内側には深い悲しみがあるものです。

続く

 

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[『お葬式の法話』大洋出版社(2021)18〜21ページより引用]